現代のビジネス環境は、デジタルトランスフォーメーション(DX)の加速、サプライチェーンの複雑化、そして予測不能な事態の発生など、様々なリスクに常に晒されています。このような状況下で、企業が持続的に成長するためには、場当たり的ではない、組織全体としての統合的なリスク管理体制が不可欠です。
しかし、多くの企業では部門ごとにリスク情報が分断(サイロ化)されていたり、エクセルなどを使った手作業での管理に依存していたりするため、非効率で対応が後手に回りがちです。
ServiceNow Governance, Risk, and Compliance (GRC)は、こうした課題を解決し、ビジネスリスクへのリアルタイムな対応を可能にするための強力なソリューションです。本記事では、ServiceNowのドキュメント(Yokohamaリリース版)を基に、その概要を解説します。
ServiceNow GRCが目指す「統合的リスクプログラム」とは?
ServiceNow GRCの最大の特徴は、これまでバラバラに管理されがちだったビジネス、IT、セキュリティの情報を単一のプラットフォーム上で連携させ、統合的なリスク管理プログラムを構築できる点にあります。
これにより、以下のようなことが可能になります。
- 継続的なモニタリングと自動化: リスクやコンプライアンス(法令遵守)の状況をリアルタイムで可視化し、手作業を自動化することで、迅速かつ正確な状況把握を実現します。
- リスクの優先順位付け: ビジネスに与える影響度を正確に分析し、限られたリソースを最も重要なリスクへの対応に集中させることができます。
- 迅速な意思決定: 経営層から現場担当者まで、すべての関係者が同じ情報に基づいて対話し、データに基づいた的確な意思決定を行えるようになります。
非効率な手作業やサイロ化されたプロセスから脱却し、組織全体で一貫したリスク対応を実現することが、ServiceNow GRCが目指すゴールです。
ビジネスのあらゆる場面に対応するGRCソリューション群
ServiceNow GRCは、特定のリスク領域に対応するための多彩なアプリケーションを提供しています。ここでは、主要なものをいくつかご紹介します。
リスク管理 (Risk Management)
事業への影響度分析(BIA:Business Impact Analysis)を行い、企業全体のリスクを特定、評価、対応、継続的にモニタリングします。これにより、リスクへの対応に優先順位をつけ、経営判断に役立てることができます。
ポリシー・コンプライアンス管理 (Policy and Compliance Management)
社内規程や法律、業界標準などのライフサイクル(作成、承認、配布、改訂)を自動化し、それらが遵守されているかを継続的に監視します。コンプライアンス違反のリスクを低減します。
監査管理 (Audit Management)
リスクやコンプライアンスのデータを活用して、監査計画の策定や優先順位付けを行います。監査プロセスを自動化し、内部監査チームの業務効率を大幅に向上させます。
サードパーティリスク管理 (Third-party Risk Management)
自社の機密情報やシステムにアクセスする外部委託先(ベンダー)のリスクを管理します。ベンダーの評価、リスクの特定、問題の是正プロセスを自動化し、サプライチェーン全体のリスクを可視化します。
事業継続性管理 (Business Continuity Management)
自然災害やパンデミックなどの緊急事態が発生した際に、事業を迅速に復旧させるための計画、訓練、実際の対応を支援します。企業のレジリエンス(回復力)を高めます。
規制変更管理 (Regulatory Change Management)
次々と更新される法律や規制の変更をいち早く察知し、自社への影響を評価。対応が必要なタスクを管理し、常に法規制を遵守できる体制を維持します。
AIリスク・コンプライアンス (AI Risk and Compliance)
近年活用が進むAI(人工知能)について、倫理的な利用を促進し、潜在的なリスクを管理・軽減するための新しいソリューションです。
これらのアプリケーションは、それぞれが独立して機能するだけでなく、単一プラットフォーム上で連携することで、より強力な相乗効果を生み出します。例えば、サードパーティリスク管理で見つかった問題が、リスク管理や監査管理のデータとして活用される、といった具合です。
リスク管理の全体像
1.Governance &Oversight(最上段)
- 取締役会や経営層が担う 全社的な統制・監督レイヤー を表します。
- 下位レイヤーの活動状況がここへ集約され、意思決定が行われます。
2.Lines of Defense(中央グレー枠)
内部統制の国際標準モデル「3 Lines of Defense」に沿って、ServiceNow の各アプリがどこをカバーするかをマッピングしています。
第1線(Operations):日々の運用現場でリスクを“発生させない”
- Security Incident Response
- Vulnerability Response
第2線(Risk & Compliance):リスク評価・ポリシー策定・是正を“支援・監視”
- Policy & Compliance Management
- Risk Management
第3線(Audit) 監査で統制の有効性を“検証”
- Audit Management
3.ダッシュボード・レポート・分析(最下段)
- すべてのデータがここに集約され、リアルタイムの可視化と意思決定支援を提供。
- 経営層は上段の「Governance & Oversight」でこの情報をもとに方針を決定します。
流れのイメージ
- 現場(第1線) でインシデントや脆弱性を検知
- 第2線 がポリシー策定・リスク評価を行い、是正タスクを発行
- 第3線 が監査で統制の有効性を検証し、改善サイクルを回す
- すべての結果がダッシュボードに集まり、経営層が統合的に監督
ポリシーライフサイクルを自動化し、コンプライアンスをリアルタイムで監視
ServiceNow® Policy and Compliance Management は、企業内に散在しがちなポリシー・基準・内部統制手順を ひとつのプラットフォーム でまとめて作成・管理できるソリューションです。
- 外部規制との自動クロスマッピング:作成した手順を関連する法規制や業界標準に自動照合し、ギャップを可視化。
- 構造化ワークフローを標準搭載:統制活動の識別・リスク評価・継続的モニタリングを、ノーコードで設定できるワークフローが支援。
手作業やスプレッドシートに頼る従来型のコンプライアンス管理から脱却し、リアルタイムでの可視化と是正サイクル を実現します。
リスクのビジネス影響を細分化して分析し、優先度を適切に設定・対応
Risk Management は、企業全体および IT 部門にかかわるリスクを 「特定 → 評価 → 対応 → 継続的モニタリング」 まで一元管理できるソリューションです。
- 集中管理:すべてのリスク情報を一か所に集約し、全社レベルで可視化
- 精緻なリスク評価:ビジネスへの影響度を定量・定性の両面から分析し、優先順位を自動算出
- 構造化ワークフロー:リスクアセスメント、リスク指標(KRI)、リスク課題を標準化した手順で管理
- 継続モニタリング:ダッシュボードでリアルタイムに状況を追跡し、早期の是正アクションを実行
これにより、ビジネス運営へ悪影響を及ぼすリスクを迅速かつ的確に低減し、組織のレジリエンス向上に貢献します。
リスクデータで監査計画を最適化し、部門横断プロセスを自動化
Audit Management は、内部監査チームの業務フローを自動化し、リソース効率と生産性を最大化するソリューションです。
- リスク&コンプライアンスデータ連携:リスク評価とコンプライアンス状況を基に、監査範囲・計画・優先順位を自動的に決定
- 再発防止:ポリシー・手順・リスク・統制崩壊を継続的にレビューし、監査不備になる前に是正
- 部門横断ワークフロー:関連タスクを統合ダッシュボードとノーコード設定で自動化し、チーム間の対応速度を向上
Regulatory Change Management は、近く施行される規制変更を自動チェックし、その影響を評価。必要なリスク・コンプライアンス対応をワークフロー化することで、組織全体の法規制遵守を継続的に支援します。
ベンダーエコシステムのリスクを常時監視し、迅速に是正
Third-party Risk Management(旧称:Vendor Risk Management) は、ベンダーが抱えるリスクを可視化・自動化されたプロセスで一元管理し、リスク低減を加速するソリューションです。
- リアルタイム監視:ダッシュボード上でベンダーリスク指標を常時トラッキングし、異常を瞬時に検知。
- 一貫した評価・是正ワークフロー:標準化された評価テンプレートと自動ワークフローで、リスク評価から是正措置までを効率化。
- 透明性の高いレポーティング:ベンダーリスクスコアと課題をわかりやすく可視化し、経営層・関係部門とスムーズに共有。
- ステークホルダー連携の強化:プラットフォーム上でベンダーとのやり取りを一元化し、説明責任と追跡性を確保。
- 統合リスクビュー:企業全体のエンタープライズリスク管理(ERM)と連携し、拡張企業全体のリスクを統合的に把握。
煩雑なエクセルやメール中心の運用から脱却し、サプライチェーン全体のセキュリティ態勢を強化します。

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